福原志保の視点

アーティストの役割

マスメディアの発達により、個人がシステム的に単純化され、人格、意識、価値が機械的に分類され決められるという社会に、芸術は見逃すことなく反応します。さらにITの出現により、社会は強い仮想空間の中に突入。個人の人間らしい価値観を喪失しないように、芸術家としての使命が強く求められています。

境界の曖昧さを浮き彫りにさせた展覧会、「初音ミクDNAを与えたら」で、福原志保は生命と非生命の問題を追求しました。架空のキャラクターでアイドル活動をする初音ミクのDNAデータを作成し、<a href=”https://www.weblio.jp/content/iPS%E7%B4%B0%E8%83%9E”>iPS細胞</a>から人工的に作り出した生きた心筋細胞に、それを組み込んで展示しました。技術の発展により夢の中の願いが本当にかなってしまうという事に驚かされます。ここには明らかな人間とテクノロジーの曖昧さが浮き彫りになり、生きた初音ミクの誕生により社会に異なる視点や価値観が生まれました。

DNA配列の解明が進み、感情も伴った人間の組織がどんどん情報化される今、感動的経験は実は機械的な分析と細工によってうまく生み出されてしまうという事に気づかされるでしょう。